会計帳簿等については、毎年度、行政庁に提出し公表する対象から除外すべき? ~ 公益信託[38]

公益信託の記事を掲載します。
「公益信託の」会計帳簿および信託帳簿のあり方は今後ガイドラインにおいて明らかに
を紹介します。
「公益信託に関する法律施行令(案)」等に対する意見(パブリックコメント)を受けて研究会(第4回)で議論されています。
いくつかの論点のうち「提出書類(信託法第37条第1項の書類について)」の議論を紹介します
パブリックコメントの意見は次のとおり
Q:
「会計帳簿等については、毎年度、行政庁に提出し、公表する対象から除外すべき。会計帳簿等には、取引年月日、内容、金額等が記載されており、公表することは、個人情報の流出の多大なリスクがある。また、取引件数により量が膨大となり、その提出を義務付けるのは手続の簡素化に逆行する。公益法人においても会計帳簿の提出、公表義務はない。」
事務局案は次のとおりです
A:
① 公益信託法20条において、信託財産に係る帳簿その他の書類(信託法第37条第1項)を受託者による開示や、行政庁への提出を必要とする書類に加えているのは、公益信託において、信託法が計算書類の監査等(一社法第124条等)を法定していないことを踏まえ、公益法人以上に経理の透明性確保が求められることを踏まえたもの
② 一般法人において、会計帳簿の閲覧請求が可能な社員を議決権の10分の1以上を有するものに制限(一社法第121条)されるのに対して、一般の信託において、原則として全ての受益者が信託帳簿の閲覧請求が可能である(信託法第38条)であることにも留意
③ 「信託財産に係る帳簿」の具体的な内容等については、内閣府令・法務省令に委ねられており、信託会計において企業会計と全く同じ帳簿を作成する慣行もない。
③ 公益信託法は、企業会計におけるものと同様の会計帳簿を公表することを想定して規定されているものではなく、個人情報等を記載した書類は公表を想定するものではない。
④ 受託者による開示・行政庁による公表等の対象となる信託財産に係る帳簿その他の書類類の在り方については、広く国民がステークホルダーであることを踏まえ、法務省令・内閣府令の規定における「公益信託の」会計帳簿及び信託帳簿の在り方について、ガイドラインにおいて明らかにしたい。
意見および事務局案を受けて委員からの意見は
A: 「『監査等』については、信託管理人の監督が代替的機能を含めて果たすことを求めており、単純に監査規定がないことから規制強化を求める論理は単純すぎる。社員と受益者との比較を行うことの法的根拠も明確ではない。『内閣府令・法務省令イメージ説明資料案』P.23によると、この場合の帳簿は、たとえば、全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿(仕訳帳)は、取引の発生順に取引の年月日、内容、勘定科目及び金額を記載するものと記載されている。これらの書類があるから計算書類も適切に作成され、どのようなものであったか後で追いかけることも可能となる。この帳簿のルールは企業会計に限らない。これらの帳簿と別の帳簿を作成し、提出、公表するのであろうか。それは二重の作業となるのではないか。」
B:「会計帳簿に個人情報はないと思う。仕訳帳に人の名前が出てくることはないと考える。」
C:「会計帳簿を公表するということは概念としてなじまない。開示を前提とした帳簿に関しては、どのようなものが相応しいか議論を慎重にすべき。」
<参考>
内閣府令・法務省令イメージ説明資料(案)


今後、作成が予定されている公益信託ガイドラインが重要なルールになります。
(出所:「公益信託に関する法律施行令案等の概要 参考資料など」 内閣府公益法人行政担当室)
「変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する。」
(ピーター F.ドラッカー)
芒種の1日、朗らかにお過ごしくださいね。
クライアントに提案したいのは節税ではなく、より良い人生です。
[編集後記]
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