新しい公益信託制度「公益信託の受託者は公益信託の事務の一部を委託することができますか?」 ~ 公益信託[96]

公益信託の記事を掲載します。
公益信託の受託者による事務委託の可否と基本ルール。公益信託事務の外部委託はどこまで可能か?
を紹介します。
公益信託の受託者は、公益信託事務の一部を第三者に委託(事務の委任)することが可能です。
おもなルールは次のとおりです。
1 委託ができる条件
信託法第28条の規定に基づき、次のいずれかの場合に事務の委託が可能とされています。
(1) 信託行為(契約や遺言)に定めがあるとき
(2) 信託行為に定めがない場合でも、信託の目的に照らして相当であると認められるとき。
(3) 信託行為に委託禁止の規定がある場合でも、信託の目的に照らしてやむを得ない事由があるとき。
2 信託行為に定めるべき事項(相対的記載事項)
重要な公益信託事務を委託する予定がある場合は、委託者の意思を明確にし、受託者の能力を判断する材料とするため、次の事項を信託行為に定める必要があります。
(1) 委託先、または委託先を選定するための基準及び手続
(2) 委託する公益信託事務の内容
すなわち、委託者は、受託者の能力を信頼して信託を行うものであり、重要な公益信託事務の委託を行うことが想定される場合には、委託者の意思として信託行為において明らかにすることが重要になります。
3 信託行為への記載が不要な「軽微な委託」
次の事務については、実務上の煩雑さを避けるため、信託行為に定めがなくても委託が可能です。
(1) 信託財産の保存行為
未登記不動産の登記、配当・利息の収受、建物の修繕など
(2) 性質を変えない範囲での利用・改良
現金預金の管理、建物の改修など
(3) 補助的な機能を有する事務
書類の郵送、事務用品の修理、弁護士・税理士等への専門業務の依頼など
4 受託者の能力補完としての意義
事務の委託は、単なる業務の代行だけでなく、受託者の技術的能力や専門性を補完する手段としても位置付けられています。
(1) 専門性の確保
受託者自身に専門知識が不足している場合、第三者に委託することで必要な専門性を確保できます。
つまり、ガイドラインP50では次のとおり
「受託者の能力は、受託者が複数ある場合には、信託行為に定められた各受託者の職務に関する規定(公益信託規則第1条第11号)を踏まえ、受託者全体で基準を満たすか否かが判断される。合議制機関の設置(同条第13号)や公益信託事務の委託(同条第14号)により受託者のガバナンスや専門性等は補完され得る(第4章第1節第2の15参照)。」
(2) 資産運用
資産運用の能力がない受託者が、投資一任契約等を利用してプロに委託することなどが想定されます。
つまり、ガイドラインP116では次のとおり
「受託者自身に資産運用を行う能力がない場合には、金銭運用に際しての『投資顧問契約』(金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第8項第11号)や『投資一任契約』(同項第12号ロ)を利用して能力を補完することも考えられる。『投資一任契約』は信託事務の委託に該当し、公益信託事務の一部を第三者に委託する場合として、信託行為に定める必要がある(第4章第1節第2の16参照)。」
(3)人員・設備の確保
公益事務の規模に応じて、人員や設備を第三者に委託して確保することも可能です。
ガイダンスP61では次のとおりです。
「『適正な運営を確保する仕組み』については、必ずしも受託者の内部組織のみで確保する必要はなく、合議制機関や信託管理人の職務によって確保することも可能である。また、人員、設備等に関しては第三者に委託することも可能である。」
このように、受託者の多様なニーズや能力不足を補うために、外部リソースを柔軟に活用できる仕組みが検討されています。
ただし、重要な事務を委託する場合には、ガバナンス確保の観点から信託管理人の承認を得るなどの規定を置くことが望ましいとされています。
(出所:内閣府公益法人行政担当室HP「新しい公益信託制度について令和8年1月14日時点版」、「公益信託認可等ガイドライン令和7年12月版」)
「変わっていくことができるものが、変えることができる。」
(白夜飛行)
啓蟄の1日、笑顔の多い1日になりますようにお過ごしくださいね。
[編集後記]
消費税の記事はお休みしました。
ブログは、曜日によりテーマを決めて書いております。
月曜日~木曜日に、おもに消費税の記事を書いております。
金曜日は公益信託の記事を掲載しております。
土・日・祝日は、ブログをお休みしております。
・「贈与や相続・譲渡など資産税」または「確定申告などの所得税」
・「公益信託」
免責
ブログ記事の内容は、投稿時点での税法その他の法令に基づき記載しています。
また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。
本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行ってください。


