「公益信託制度の施行準備に関する研究会」の公益信託認可ガイドライン案の「利益相反取引」について ~ 公益信託[45]

公益信託の記事を掲載します。
第7回の研究会(8/22)では「第4章公益信託認可の申請等」において「利益相反取引」について各委員から意見が出ています
を紹介します。
公益信託認可ガイドラインガイドラインは令和7年12月の策定予定です。
各委員からの意見は次のとおりです
1 信託管理人の適正な判断について
私は③(利益相反取引について、「①『ミニマムベネフィット』を上回らない水準」又は「②受託者が負担した費用又は原価を合理的に算出できる」のいずれも難しい場合に、個別取引について重要な事実を開示し、信託管理人の同意を得れば認められるというは問題だと考えている。
信託管理人は公益信託の運営等がルールに従っているかどうか、手続きが適正化どうかを判断できる能力はあるが、利益相反取引になる個別取引について、①~③で示すような条件に当てはまるか否かの適正な判断はできないのではないか。本来信託管理人に対して求める任務、能力を超えて過酷であると思われる。
そもそも、「②受託者が負担した費用又は原価を合理的に算出」できない場合というのは、受託者の費用算定能力、体制が整っていないとみなされるのではないか。①又は②に当たらない③の取引がある場合は、当該利益相反取引に関して対価は0であるべきではないか。
2 利益相反行為に該当する受託者が提供する物品や役務の価格等の取引条件
自分は、B 案を見て、自己取引とはならない、立替払いを想定したのかという感想を持ち、そういった観点からの記載を置いた方が良いと感じた。今との意見を聞いて、購入から時間が経過しているというような、費用又は原価を合理的に算出できるか分からない場合には、②を使うのではなく、①を使うという選択肢はあると思う。②を満たさないような場合はそもそも受託者の費用算定能力等が足りていないと見なされるのではないかという御意見に関して言えば、②はどういうケースを想定された記載であるかということが重要なのではないか。
③が必要となるのは、おそらく、信託行為を締結する時点では、今後想定される利益相反取引について事前の費用又は原価の合理的な算出が難しい場合であろう。
認可された後にある程度時間が経過して、利益相反取引を行うときに、はじめてどのくらいの費用がかかるか合理的に算出できるようになる場合もあるのではないか。その適正性を判断できる能力のある信託管理人を確保することができるのであれば、③の対応が必ずしも不適当ということにはならないと考える。
<参考>
【公益信託認可ガイドライン案イメージ】第4章 公益信託認可の申請等P43
○ 利益相反行為に該当する受託者が提供する物品や役務の価格等の取引条件については、受託者に対する「特別な利益」の提供が禁止されている公益信託の性格に鑑み、以下の何れかの事項に該当することを求めるものとする。
① 同種及び同量の取引を同様の状況の下で行った場合に成立する通常の客観的な取引の条件と比べて、受託者に有利にならない「ミニマムベネフィット」を上回らない水準であることが明らかであること。
② 受託者が負担した費用又は原価を合理的に算出できる場合は、当該算出結果をもって取引条件とすること。
③ ①又は②での対応できない場合、個別取引についての重要な事実を開示して、信託管理人の同意を得ること。この場合に、「信託概況報告」に当該利益相反行為の重要な事項と信託管理人に開示した内容等を記載すること
3 規模の小さな公益信託における利益相反取引の考え方について
利益相反取引に関して、これまで信託法第31 条を基に議論されているが、第31 条だけで議論するのが妥当なのだろうか。
「受託者(NPO 法人等)が公益信託のために自らの物品や役務を提供し、その費用を信託財産から支出する」例があるが、これは信託法第48条の「受託者が必要と認められる費用を固有財産から支出した場合」に相当すると考えられ、例では「受託者が信託財産に物品や役務(サービス)を販売するものであり、「信託法第31条第1項第1号に該当」と書いているが、これは適当ではない。
いずれにしても、議論になっているようなここまでの細かな事項を詰める必要がある利益相反取引は大規模な取引だけであると考えられ、正確なその詳細の算定は規模の大きな団体(公益信託)でないと難しく、規模の小さい子ども食堂などを行う団体(公益信託)において同様の粒度で費用又は原価の算定を行うことは難しいのではないか。
②ができないのは受託者の能力がないという議論が出たが、大規模な団体(公益信託)では②が可能かもしれないが、小規模な団体(公益信託)では②は能力の問題ではなく実務上ほとんど不可能であり、②ができるかできないかを、団体(公益信託)の規模を問わず一律の考え方にするのは妥当ではない。
4 利益相反の規律を細かく規定することは現実性に欠いている
信託法の規律として、受益者が特定されているのが第31 条の規律だと認識しており、受益者が特定されている場合、その受益者が同意すれば利益相反行為でも成立する。
一方で、公益信託は受益者が不特定多数であり、信託管理人がどこまでの能力を持っているか確証がないため、信託管理人の同意を得ると言っても難しいのではないか。また、公益信託は様々な活動を行うことが想定されるため、子ども食堂のような例で様々な活動が起こっているときに、一つ一つの活動の運営主体から財産や費用支出をすることと、公益信託の側から財産や費用を支出することとが競合することはありうる。
したがって、利益相反の規律を細かく規定することは現実性に欠いている。
小規模な団体でも取引可能な規律にしておいて、大規模な団体の場合にはより具体的な上乗せの規律を求めることとすべきであろう。このような子ども食堂の例などの利益相反となる事例について、公益信託の支出と団体の資産の支出が競合したときにどのように処理するのかを、もう少し分かりやすく規定すべきである。
5 大規模な信託と小規模な信託について、同一のレベルの正確性を求めるような規制を設けるのは無理がある
大規模な信託と小規模な信託について、利益相反行為に限らないが、同一のレベルの正確性を求めるような規制を設けるのは無理がある。これまでの研究会の議論でも規模別の規制の必要性は出てきており、個別の論点の議論においても考慮されるべきである。
6 第31条の利益相反取引に該当する場合には基準の厳しさが必要
②を満たさないような場合はそもそも受託者の費用算定能力等が足りていないと見なされるのではないか、という自分の意見に関して言えば、「正確に(費用又は原価を)算定する」ということと、「合理的に(費用又は原価を)算定する」ということとは全く別であり、「1円1銭単位まで正確に(費用又は原価を)算定する」ことができなければ受託者の費用算定能力等が足りていない、という主張ではない。
また、信託法第48条と第31条の話もあったが、この2つも基準は別であり、第31条の利益相反取引に該当する場合には、それなりの基準の厳しさが必要ではないかということを申し上げている。
7 公益信託の規模を問わず適正な価格での取引は求められるべき
論点の確認として、受託者が、物品が必要なときに第三者から購入すれば費用償還として信託財産から払い出す。これは、形式的には自己取引に見えるが、信託法第48条で許可されているから信託財産から費用を償還していいというのが基本的な考え。
受託者が固有財産として持っているときに自分の財産で処理すればいいというのは形式的には理解できるが、その取引において、お手盛り的に過剰に利益を乗せることが事実上可能であり、その場合は利益相反取引だから適正な価格であるべきだ、ということを議論としているだけで、市場で第三者から買えばいいものを自己で持ち出しているから論点が増えているだけではないか。適正な価格での取引については、公益信託の規模を問わず求められるべきことである。
8 公益信託の仕組みは行政庁の認可が前提となってできている
意見書(参考資料2・P9)項番13 番について、公益信託の場合受益者がおらず、公益のためかというのが重要な観点である。信託管理人は公益を図るために動くことが求められているが、公益信託の仕組みは行政庁の認可が前提となってできている。
緊急でない場合には、あらかじめ信託行為に記載されるべきという事務局案に賛成である。書き方は信託管理人の承認を得てなど柔軟な書きぶりをすることは可能だと思慮する。柔軟な書きぶりをして委託者と合意することは問題ないが、行政庁の認可としても柔軟な記載に必要な体制を受託者に求める必要があると考える。
<参考>
意見書(参考資料2・P9)項番13 番
「子ども食堂を運営するNPO法人を受託者として子ども食堂を公益事務とする公益信託(第三者から安価で良い食材の提供)において、固有財産と公益信託のどちらに寄附があったものとするか?」
9 小規模な信託においては細かく信託行為に記載がされていなくても信託管理人の同意があれば柔軟な対応が可能とした方がいい
公益信託法施行規則において、利益相反に当たる場合には信託行為に記載するように定めが置かれたこと自体に異論がある訳ではない。具体的に利益相反行為に該当する取引条件を議論するに当たっては、信託管理人の同意があれば信託法上は相対的に緩い規制になっていることを考慮すべきである。
大規模な信託に対しては行政庁が厳しく関与してくということは妥当であるが、小規模な信託においては細かく信託行為に記載がされていなくても信託管理人の同意があれば柔軟な対応が可能とした方がいいと考える。
10 小規模公益信託に対しても、利益相反についてはきちんと対応していくべき
小規模には実務上の要請として緩い運用は理解しているが、公益信託という枠組みを使う都合上、利益相反に限らないが、公益信託法制として守るべき規律は守る必要がある。
小規模公益信託に対しても、利益相反についてはきちんと対応していくべきである。信託管理人の同意のみで可能とするなど柔軟な運用をするのであれば、信託管理人に非常に高い能力が求められる。
(出所:第7回会議関係資料 内閣府公益法人行政担当室)
「変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する。」
(ピーター F.ドラッカー)
処暑の1日、朗らかにお過ごしくださいね。
クライアントに提案したいのは節税ではなく、より良い人生です。
[編集後記]
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