井上寧(やすし)税理士事務所井上寧(やすし)税理士事務所

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2025.10.21.Tue | 公益信託

公益信託における「関連当事者との取引に関する事項」および「その明細」について、どこまでの記載を求めるか?~ 公益信託[57]




公益信託の記事を掲載します。






公益信託の関係者との取引については透明性を確保する必要性が高いことから、これらについて毎年度、開示の対象です






を紹介します。




関連当事者との取引に関する開示の考え方は次のとおりです




1 公益信託の運営において、公益信託令第1条に定める公益信託の関係者に「特別の利益」を与えることは許されません。


2 そうした公益信託の関係者との取引については、透明性を確保する必要性が高いことから、これらについて毎年度、開示の対象としています。


3 公益法人制度においては、会計基準(運用指針)において該当する取引は計算書類に注記しなければならないことを明らかにするとともに、関連当事者の定義、明細書に記載すべき事項などが定められています。


4 関連当事者との取引に関する情報は、財務報告を補完するものであり、公益信託制度においても、計算書類に注記し、一体のものとして信託管理人の承認を受けることが望ましい。なお、計算書類に注記されている場合には、別に作成する必要はありません。




対応方針(案)は次のとおりです




1 関連当事者の範囲については、法令上特別の利益を与えてはならない次の信託関係者に限定します


(1) 公益信託の委託者、受託者および信託管理人

(2) (1)に掲げる者が個人の場合は、その近親者

※ 近親者等とは配偶者(事実婚を含む。)および三親等内の親族並びにその財産によって生計を維持する者をいいます。

(3) (1)に掲げる者が団体の場合は

① 当該団体の業務を執行する役員(これに類する者を含む。)およびその親族等

② 委託者または受託者が団体である場合に、その子法人および親法人




2  関連当事者との取引に係る記載事項は次のとおりとします




(1) 法人の名称または個人の属性(委託者、受託者または信託管理人の近親者等、受託者の役員など)

(2) 法人の住所(個人の住所は不要)、法人と公益信託の関係(受託者、受託者の子法人など)

(3)  取引の内容、取引金額、科目および期末残高




3 次の取引は関連当事者取引に含めないものとします(公益法人並び)




(1)  一般競争入札による取引並びに預金利息および配当金の受取りその他、取引の性質からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引

(2) 公益信託の受託者または信託管理人に対する信託報酬の給付

(3)  公益信託に対する寄附(信託を含む。)




4 次の取引は重要性が乏しいため関連当事者との取引としては記載不要なものとして明確化します




(1) 一の関連当事者との取引総額が100万円(公益信託の経常費用の額の十分の一の額が100万円を下回る場合にあっては経常費用の額の十分の一の額)を下回る場合

(2) 一の関連当事者との資金貸借取引等について、期末残額が100万円を下回る場合




これらの記載(案)を受けて委員からは次の意見が出ています




A:「第 5 章P.44 以下、委託者や信託管理人が法人の場合、関連当事者との取引が無いことを受託者が明白に示すために、受託者とは別の主体である委託者や信託管理人の役員等から協力を得ることには実務上の困難を伴うと予想される。

現在公益信託の運用をおこなっている組織とは別の組織の関与が必要となる上、関連当事者の範囲が広ければ、多数ある公益信託全てについて理事や役員に対して確認するのは負担。関連当事者取引についてどの程度確認するかは検討すべき。」


B:「関連当事者の範囲が公益信託法第8条第5号・公益信託法施行令第1条の示す範囲とずれているのではないか?『(3)当該公益信託の委託者、受託者及び信託管理人が団体の場合』、『当該団体の業務を執行する役員(これに類する者を含む。)及びその親族等』が関連当事者の範囲に含まれるとしているが、信託管理人が団体の場合には、業務執行役員は施行令第1条第2号では関係者には含まれないとなっている。また、『(3)親族等』というのは、施行令第1条第3~5号を踏まえているが、『(2) 近親者等』と同じ条文に帰結するものと思われ、表現をそろえるべき。」


C:「関連当事者との取引として記載不要とする範囲について、『一の関連当事者との取引 総額が100万円(公益信託の経常費用の額の十分の一の額が 100 万円を下回る場合にあっては経常費用の額の十分の一の額)を下回る場合』としているが、例えば、年間 100 万円を下回っていたとしても委託者の親族と毎年取引をしている等、疑わしい事例もあると思われる。一律に『100 万円を下回れば注記不要』とする基準の妥当性を検討すべき。」


D:「『一の関連当事者との資金貸借取引等について、期末残額が100万円を下回る場合』という書き方では、期末残額が100万円を下回っていれば、期中にいくらでも関連当事者取引を行って良いと判断され得るのではないか。」


E:「『一の関連当事者との資金貸借取引等について、期末残額が100万円を下回る場合』には、期末ごとでなく総額で見ることも考えるべきである。また、『一の関連当事者との取引総額が100万円を下回る場合』とは、どの程度の信託財産規模を想定した規定か?経常費用の額の十分の一という基準が示されているものの、100万円という額自体が高く感じる。なお、利益相反取引・関連当事者取引に関連し、100万円以下の取引については注意する必要がないと思われないようにしたいところ。」


F:「企業会計と並べ、100万円は大規模に思われる。期末残高とせず、平均残高を基準とする考え方もあるのではないか。」


G:「重要性の原則を勘案し、機械的な一律の基準を設けて報告を求めるという方針自体には賛成する。ただし、関連当事者取引について報告をしても、実際に行った取引は正当化されないという点を明らかにする必要がある。」


H:「金額の客観的な基準を示すことは良いが、基本的に公益法人より小規模な公益信託を想定しているなら、多くの公益信託にとって 100 万円という基準は大規模に思われる。例えば 10 万円ぐらいまで基準を下げて、公益信託の規模に応じて基準を高くしたり、経常費用の額の何パーセントを超えないときはその限りでないと例外を決められないか。小規模な公益信託を想定しているという従来の議論を踏まえ、まずは小規模の公益信託のルールを決めて、大きな公益信託の場合を例外とするほうが良いのではないか。」


I:「100万円という額が基準として妥当かという論点に加えて、取引の相手方によって額を変えても良いのではないか。取引の相手が受託者の場合は、日々様々な取引が生じ、その都度記載するのは手間がかかるので、100 万円は妥当であろう。一方で、受託者の近親者とあえて取引するのであれば、その場合は厳しく審査する必要があるため、100 万円より基準を下げなければならないのではないか。」


J:「前提として、受託者の自己取引に関しては別に開示義務があるところ、それとは別に関連当事者との取引に関する事項を作成しないといけなくなると金額の基準を緩めた場合手間である。

また、関連当事者取引を考えるに当たっては、信託財産の規模とは別に、受託者と委託者の規模も考える必要がある。(大企業の場合、公益信託とは無関係の業務を担当する役員も想定されるため)信託財産は数千万規模でも、委託者、受託者が大企業である場合、公益信託で支払いが発生すると、公益信託の委託と無関係の役員について(関連当事者との取引がないことの)確認のために更なる負担がかかってしまう。」







(出所:第8回会議関係資料 内閣府公益法人行政担当室)











「変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する。」

(ピーター F.ドラッカー)

寒露の1日、朗らかにお過ごしくださいね。










[編集後記]



トップ画像は、お店「プラスR」のインスタグラムより。

画像の掲載についてはお店の了解を得ております。




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