井上寧(やすし)税理士事務所井上寧(やすし)税理士事務所

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2025.10.29.Wed | 公益信託

「公益信託制度の考え方・ガイドラインの在り方」【委員からの意見について】 ~ 公益信託[63]




公益信託の記事を掲載します。






「第9回公益信託制度の施行準備に関する研究会(10/14)」で「公益信託制度の考え方・ガイドラインの在り方」について、各委員の考え方が示されています






を紹介します。




研究会においてガイドライン素案(イメージ(全体))が提示されています。

このうち事務局から「公益信託制度の考え方・ガイドラインの在り方」が示され、これを踏まえた各委員からの意見は次のとおりです。




受託者のガバナンスについては、公開性と市民社会による監視を重視する非営利公益組織規制の基本を尊重すべきではないか?




「公益法人制度はイギリスのチャリティー・コミッション型に近く、立法過程でも参照されている。イギリス型・アメリカ型ともに情報公開をさせて、市民社会の監視による規制を重視するというのが基本である。」




税制優遇の観点から行政の監督権限がもたらされているという理解は誤っているのではないか?




「公益法人としても公益性の論理に基づいて議論がなされるべきであり、それに基づき税務当局は税制の判断をすべきである。そのため、税制優遇ありきで制度の規制が語られるのは誤っている

民間公益活動を活発化するというのが法の目的であり、その達成のために規制がどうあるべきか議論すべきである。譲渡所得税に関しても3分の1ルールや基金の話は当然出てくるが、公益性を担保するために規制が必要であるということであり、論理の順番が重要である。」




規模別/内容別のガイドラインを策定すべきではないか?




「不適切な運営は許容されないという原則に基づいて規制のコストと効果のバランスを考慮して考えられるべきであり、3割規制(公益事務割合を70%以上と定めていること)を一律に適用するのは適切と言えないのではないか。一般的に許容度を高めるべきということではなく、逆に大規模な信託においては規制を強めてもいいと考える。小規模な信託が厳しい規制をクリアするために書類を大量に作成するようなことがあっては、民間の意思をくじいてしまう。公益信託の数を増やしていくことが重要であるという国会の議論も踏まえ、そういったことがないようにしていただきたい。」




法令上の義務と、望ましい事項の峻別(法令の義務とアドバイスに過ぎないものが混在しており、整理すべきではないか?)




「運用にはある程度の裁量があり、一義的な書き方をすることが難しいという事務局の事情は理解できるが、原則として法令上の義務とそれ以外のものを分けて記載してほしい。

 地方行政庁は分散管理をしているところも多く、ガイドラインに記載されている内容を全体的に規制・義務として受け取ってしまう可能性がある。最低限の規制のみ記載し、アドバイスは色やフォントを変えてわかりやすく記載すべきである。」




「資料2の5ページの関係者の責務について、一番下の段落に『社会の変化等に対応して公益信託事務の実施方法等を見直すことも必要であり』と記載されているが、信託行為に書いてある信託事務内容を変更する義務があるようにも読める。 

信託事務の処理については委託者との間で決めた通りに行うことが基本であり、信託事務処理内容の変更を『期待する』という程度かと思う。」




ガイドラインの見直しをする際に、公益信託の担い手が参画することが確保されるよう、ガイドライン等に明記すべきではないか?




「公益信託制度を出来るだけ持続的なものとするために、ガイドライン見直しの議論に関係者を参画させるのは当然であるので、ガイドラインに明記していただきたい。」




信託財産の運用と収益事業の概念についてp.12「収益事業」は許されていない、という場合の「事業」概念の再確認が必要である

(例)小規模性を持つ場合や財産運用をしている場合は、収益事業概念を限定すべきである。

(例)地域の空き家・空き地について、小規模(5棟10室基準)に賃貸等をすることを許容すべきである。




「先日のワークショップや、令和6年5月10日の内閣委員会の議論にもあったが、都市の空き家問題などを解決するために公益信託を活用することが非常に強く期待されている。空き家を受託する公益信託に関して、収益を得て子ども食堂にできないかという議論がなされるのは当然である。ガイドラインにおいては紋切型に『公益事務のみを行うことを目的として』と回答されているが、

 イギリスにおいては、charity purpose onlyとなっているものの、公益事業を目的とするための小規模で付随的な収益事業は認められている。公益事務のみを行うことを目的とするのは当然の前提だが、その上で現場の実態に即して小規模で付随的な収益事業は認められるべきではないか。それによって会計の複雑性が増すリスクはあるが、あくまでも小規模ゆえに会計の収益性の影響も少ない範囲で実施することは考えられる。」




「資料5のp.19の運用対象や運用形態に関する記載について、実際に運用の専門家に対して運用を委託した時、大規模なポートフォリオを組む場合、この通りの運用をするように縛るものとしては弊害が出る。『充足しない場合は個別に判断する』とも記載されているが、現状の記載がかなり確定的に書かれているため、これに従わないといけないと考える人もいるのではないか。」








(出所:第9回会議関係資料 内閣府公益法人行政担当室)








「変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する。

(ピーター・F.ドラッカー)

霜降の1日、朗らかにお過ごしくださいね。







[編集後記]


消費税の記事はお休みしました。




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