公益法人(公益社団法人と公益財団法人)における承認基金の要件と考え方について ~ 公益信託[54]

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公益信託の受託者が特例を受ける場合、公益法人と同様に承認基金で管理する方法が必要です。公益法人の承認基金設置のルールとは?
を紹介します。
承認特例および特定買換資産の特例を受けるためには、承認特例の場合は寄附前に、特定買換資産の特例の場合は40条1項対象資産を譲渡する前に、公益法人において、告示に定める要件を満たした基金を設置し、行政庁が要件の確認をした証明を受ける必要があります。
公益法人における基金の要件(ルール)は次の5つです
① 基金が他の経理と区分して整理されていること
② 基金が公益社団法人および公益財団法人の認定等に関する法律第2条第4号に規定する公益目的事業に充てられることが確実であること。
③ 基金に組み入れた財産の運用によって生じた利子その他の収入金(当該収入金をもって取得した資産を含む。)を、この基金に組み入れることとしていること。
④ 基金への財産の組入れ、基金に組み入れた財産の運用、基金に組み入れた財産の運用によって生じた利子その他の収入金の使途など基金の管理および運用に関する重要事項について審議する合議制の機関を設置していること。
⑤ 基金に組み入れた財産の種類、贈与をした者の財産の取得価額、財産の贈与等の時における価額(贈与等に係る財産の譲渡をし、譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもって資産を取得した場合には譲渡による収入金額、当該資産の種類及び取得価額を含む。)およびその他参考となるべき事項を記載した基金明細書であって監事の監査を受けたものを、毎事業年度終了後3か月以内に、行政庁に提出するとともに、その写しを作成した日の属する事業年度の翌年度の開始の日から5年間、当該公益法人の主たる事務所の所在地に保存することとしていること。
これら5つのルールのうち具体的な考え方は次のとおりです。
① 基金が他の経理と区分して整理されていること
基金に関する経理書類として⑤にある基金明細書を作成するルールです。
② 基金内の寄附資産の業務への充当について
基金に組み入れた資産は、公益社団法人および公益財団法人の認定等に関する法律第2条第4号に規定する公益目的事業に速やかに充てることが必要です。
たとえば、寄附を受けた土地を収益目的で貸し付け、その賃貸収入を将来的にこれらの業務に充てるようなことは認められません(貸付けた時点で、寄附を受けた土地をこれらの業務以外に充てることとなるため)。
一方、たとえば、寄附を受けた土地を有価証券等に買い換え、その運用益を将来的にこれらの業務に充てるため基金に組み入れることは可能です(有価証券等については、土地の貸付けと異なり、これらの業務以外に充てていないため)。
なお、特例寄附資産(承認特例または特定買換資産の特例の適用を受けた資産をいいます。以下同じです。)については、基金内で他の現物資産への買い換えを行うことが可能ですが、特例寄附資産の買い換えを行った場合は、その譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもって資産を取得する必要があるため、新たな資産を取得するまでの間は、その収入金(現預金)を基金内に留保しておくことが必要です。
特例寄附資産を寄附日から2年以内に事業供用しなかった場合には、将来、公益法人の公益認定が取り消された際等に非課税承認が取り消され、寄附者に対してみなし譲渡所得税の課税がされる場合があります。
③ 基金内の運用益の考え方について
基金内で生じた運用益(配当金、利息等)については、基金に組み入れる必要があります。
この運用益については、基金の事業の範囲内であれば、資産の購入、助成金等の費消する経費への充当など、自由に使うことができますが、支出を行った場合は基金明細書に必要な事項を記載する必要があります。
また、運用益を基に資産を購入し、その資産を譲渡した場合の譲渡収入およびその収入金額で取得した資産も同じ扱いとなります。
④ 合議制の機関について
合議制の機関を設置することを基金の証明の要件としているのは、基金に組み入れた資産を恣意的に寄附者やその関係者の利益に資するように使われることがないようにするためです。
合議制の機関の構成要件等の決まりは特にありませんが、このような趣旨を踏まえ、適切な機関を設置する必要があります。なお、理事会をこの合議制の機関として定めることも可能です。
基金の証明申請に当たっては、この合議制の機関として、理事会以外の機関を設置する場合には、当該機関の構成員が分かるものをご提出する必要があります。
なお、合議制の機関においては、資産を基金へ組み入れる決定等を行った際に議事録の作成が必要になります。
⑤ 基金明細書について
基金明細書は基金に組み入れた資産が適正に管理されているかを毎年度、行政庁が確認するために提出するものです。
この確認において、一定の事由に該当していることが確認され、非課税承認が取り消された場合は、寄附者または公益法人に対して課税されることとなります。
行政庁で確認するポイントは次のとおりです。
ⅰ 基金が告示に定める要件を満たしているか(基金が各公益法人の基金規程に定められている事業に充てられているか、また、基金内の運用益が適正に取り扱われているか)
ⅱ 資産の買換えを行った場合、適切に買換えが行われているか(譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもって買換資産を取得しているかどうか)
ⅲ 特例寄附資産が寄附者に利益を還元するような形で使われていないか?
(出所:「公益社団法人・公益財団法人に対する個人からの現物資産寄附のみなし譲渡所得税非課税承認~証明申請等の手引き~」令和2年5月28日現在)
「変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する。」
(ピーター F.ドラッカー)
白露の1日、朗らかにお過ごしくださいね。
クライアントに提案したいのは節税ではなく、より良い人生です。
[編集後記]
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