新しい公益信託制度における「委託者の地位と権限」と私的利益排除の仕組みについて ~ 公益信託[95]

公益信託の記事を掲載します。
新しい公益信託制度における委託者の地位と権限(公益性確保のための制度設計)
を紹介します。
委託者は信託を設定する主体であり
自身の想いや意思を信託行為に反映させる重要な役割を担います。その地位や権限には「公益性」を確保するための独自の制限が設けられています。
1 委託者の地位
(1) 相続による承継の禁止
委託者の地位は、相続によって相続人に承継されることはありません。
委託者の相続人が必ずしも公益信託の目的に賛同する者であるとは限らないこと、また、相続人が多数の場合等に公益信託の迅速な意思決定が困難になるおそれがあることなどによります。
(2) 地位の移転
受託者および信託管理人の同意を得て、契約によって地位を移転することは可能ですが、行政庁の認可(信託の変更手続き)が必要となります。
(3) 信託管理人との関係
委託者自身やその親族、使用人などは、その公益信託の信託管理人になることはできません(欠格事由)。
つまり、「当該公益信託の受託者の親族、使用人その他受託者と特別の関係がある者又は当該公益信託の委託者若しくは委託者の親族、使用人その他委託者と特別の関係がある者であること(公益信託法第9条第3号)」が欠格事由として掲げられています。
2 委託者の権限
おもに次の権限を有しています(信託行為で制限することも可能です。)。
(1) 監視・監督する権限
公益信託を監視・監督する権限として、信託事務の処理の状況について報告請求権、受託者の選解任に係る権限など有しています。
(2) 基礎的な変更に関する権限
信託の変更、終了、併合、分割などに関する権限
(3) 利害関係人としての権限
信託行為に定めることで、受託者の権限外行為の取消し、利益相反行為の取消し、帳簿等の閲覧請求などの権限を持つことができます。
(4) 助言
任意に委託者の権限を定めることは排除されませんが、 公益信託事務は、受託者の責任において実施する必要があり、委託者が拘束力のある指示等を行うことはできません。
法令に反しない範囲で助言する等は可能ですが、その際には、公益信託が委託者の私的利益のために用いられることがないよう配慮することが求められます。
3 公益信託特有の制限(私的利益の排除)
公益信託が委託者の私的利益のために利用されることを防ぐため、次の厳しい制限があります。
(1) 残余財産の帰属
信託終了時、委託者を残余財産の帰属権利者に指定することはできず、財産が委託者に戻ることはありません。
すなわち、公益信託の信託財産が信託終了後も「公益」に資することが求められています。委託者を残余財産の帰属権利者に定めることはできません。
(2) 終了の制限
信託行為に別段の定めがない限り、委託者と信託管理人の合意のみで信託を終了させることはできません。
つまり、公益信託は、安定的・継続的に公益事務を行うことを期待されて、社会的サポートを受けつつ公益事務を行うものであり、委託者及び信託管理人の恣意的な判断で終了させることが適切ではないからです。
(3) 特別の利益の禁止
委託者やその親族等に対して、信託財産を用いて「特別の利益」を与えることは認められません。委託者との取引については、透明性を確保するために情報開示が求められます。
ようするに、公益信託の委託者、受託者及び信託管理人は、その地位を利用して、自ら又は自らの親族等に対して利益を誘導し得ることから、特別な利益の供与を禁止すべき対象となります。
<参照>
ガイドラインP105
「公益信託も受益者の定めのない信託であるが、信託法第11章(目的信託の規定)が適用されないため、受託者に対する監督が問題となり信託管理人を必置とすることによりガバナンスを確保することとされている。委託者の権限は、公益信託が委託者の私的利益のために用いられることはあってはならないことから、委託者による不適切な影響力の行使を排除することに重きを置き、委託者の影響力を制限するような規定が置かれている。」
(出所:内閣府公益法人行政担当室HP「新しい公益信託制度について令和8年1月14日時点版」、「公益信託認可等ガイドライン令和7年12月版」)
「変わっていくことができるものが、変えることができる。」
(白夜飛行)
啓蟄の1日、笑顔の多い1日になりますようにお過ごしくださいね。
[編集後記]
消費税の記事はお休みしました。
ブログは、曜日によりテーマを決めて書いております。
月曜日~木曜日に、おもに消費税の記事を書いております。
金曜日は公益信託の記事を掲載しております。
土・日・祝日は、ブログをお休みしております。
・「贈与や相続・譲渡など資産税」または「確定申告などの所得税」
・「公益信託」
免責
ブログ記事の内容は、投稿時点での税法その他の法令に基づき記載しています。
また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。
本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行ってください。


