新しい公益信託制度「公益信託は委託者の願いをどう実現するのか?基本となる考え方」 ~ 公益信託[100]

公益信託の記事を掲載します。
委託者の意図はどこまで実現できるか?信託の本旨と制度設計のポイント
を紹介します。
1 「信託の本旨」としての委託者の意図
公益信託を規律する信託法では、受託者は単に信託行為(契約や遺言)の定めに形式的に従うだけでなく、その定めの中にある委託者の意図、すなわち「信託の本旨」に従って信託事務を処理する義務を負っています。
そのため、信託の設定にあたって、委託者の意図(公益目的)を明確に示し、信託の本旨を明らかにすることが極めて重要であるとされています。
<参照> ガイドラインP9~
「その一方、公益信託を含む信託を規律する信託法の第29条第1項において、『信託行為の定めに従い』ではなく、『信託の本旨に従い』とされたのは、受託者は、形式的に信託行為の定めに従っているだけでは足りず、信託行為の定めの背後にある委託者の意図、すなわち信託の本旨に従って信託事務を処理することが求められるとの趣旨と解されている。」
「こうした公益信託の仕組みを踏まえると、公益信託の設定に当たり、委託者の意図(公益目的)を公益信託の目的として明確に示し、信託の本旨を明らかにすることが極めて重要である。受託者は、この点を委託者によく説明し、共通の理解の下、信託契約を策定することが必要となる。」
2 信託行為による具体的な設計
委託者は、自身の思いを反映させるために、信託行為(信託契約や遺言)の内容を柔軟に定めることができます。
(1) 公益事務の内容
公益事務の内容をどの程度具体的・明確に定めるかは、委託者の意思によります。詳細に定めることも、または受託者のガバナンスを前提に一定の裁量を認めることも可能です。
(2) ガバナンスの構築
事務の適正を確保するために、特定の専門家を関与させたり、合議制の機関を設置したりといった仕組みも、委託者の意思で信託行為に盛り込むことができます。
(3) 残余財産の帰属先
信託が終了した際の財産の行き先についても、委託者の意思に基づき、類似の公益目的を持つ団体や国・地方公共団体などをあらかじめ指定できます。
<参照> ガイドラインP20、P130、P102、P103
「なお、信託行為に公益事務の内容をどの程度具体的に、明確に定めるかは、委託者の意思により、信託行為に詳細に定め、あるいは、受託者のガバナンスを前提に公益法人と同様の裁量を認めることも可能であり、委託者の意思を尊重することが求められる。」
「一方、ガバナンスの確保の観点から合議制機関を置く場合は、(1)重要な意思決定について合議制機関に承認等の権限を付与し、(2)統制を受ける受託者が恣意的に決定できない仕組みとする観点から、委員の選任や報酬等について信託管理人の同意を必要とすること等を信託行為に明記する必要がある。」
「そこで、公益信託の信託行為には『帰属権利者となるべき者を指定する定め』を記載することを求めている。」
「なお、信託行為の定めに従った結果、残余財産の帰属先が定まらない場合は、国庫(都道府県知事が行政庁の場合は、当該都道府県)に帰属する(公益信託法第27条)。」
3 公益行政による尊重
公益信託の認可や監督を行う行政庁も、「寄附者等の意思」や「信託行為において自主的・自律的に構築されたガバナンス」を最大限に尊重することを考え方としています。
行政庁側が受託者に特定のルールを一方的に押し付けることは厳に慎むべきとされています。
<参照> ガイドラインP10
「公益行政は、公益信託の関係者(委託者、受託者、信託管理人等)が信託行為において自主的・自律的に構築したガバナンスの下で、コンプライアンスを確保し、適切に公益信託の運営を行うことを前提に、寄附者等の意思、信託行為に従った受託者等の自律的な判断などを最大限に尊重して行う。審査や監督は、公益信託法令に従うことを原理原則とし、行政庁及び各行政庁における合議制機関側で受託者等が従うべきルールを一方的に設定し、これを押し付けることは、厳に慎む。」
4 受託者による説明と共通理解
委託者の思いを正確に反映させるため、受託者(になろうとする者)は委託者に対し、公益信託の仕組みや信託行為の内容について十分に説明する責任があります。委託者は、自身の思いがどのように反映されているか、ガバナンスや費用、報酬の基準などがどうなっているかを理解した上で「承諾書」を作成するプロセスが求められています。
<参照> ガイドラインP97、P259、P145
「なお、委託者の意思として、公益信託の運営を法令の範囲で受託者の裁量に委ねることは可能であるが、委託者による十分な検討がないまま、単に信託行為に定められなかった結果として、受託者の裁量に委ねられることは適切ではない。このため、公益信託のガバナンス等に係る重要な事項については、法令の原則どおりとする場合であっても、その旨を信託行為において明らかにすることが適切である。受託者は、委託者に対し、法令で信託行為に定めることとされた趣旨をよく説明し、委託者の真意を一つ一つ確認した上で、信託行為を作成することが望ましい。」
「なお、公益信託は、委託者の意思、すなわち公益信託の本旨に沿って受託者が信託財産を活用する制度であるところ、委託者の真意に沿わない形で公益信託が設定されることはあってはならない。受託者は、委託者の真意を十分に確認した上で公益信託の認可申請をすることが求められるが、受託者が、委託者に対して申請に係る公益信託の内容(制度の趣旨を含む。)を適切に説明せず、又は公益信託法第18条に違反するような勧誘を行うことにより、公益信託の設定が行われたことが判明したときは、「偽りその他不正の手段により公益信託認可」(公益信託法第45条)等が行われたものとして、又は、受託者にはコンプライアンスを確保して公益信託事務を適正に処理する能力(技術的能力)を欠くものとして、厳格に監督処分等を行うものとする。」
「公益信託は、委託者が、その想い・意思を実現するために財産を受託者に信託して、公益事務を行わせる仕組みであり、その趣旨を踏まえると、申請に係る公益信託の内容について受託者が十分に理解した上で、申請内容が委託者の想いに沿ったものであることを確認することは、極めて重要である。万一、受託者(候補)等による不適切な勧誘により、委託者の意思に沿わない公益信託が行われることがあれば、制度の信頼性を揺るがすことにもなりかねない。このため、受託者は、委託者に対して、公益信託の内容等について十分に説明する必要があり、その上で、委託者が承諾することが求められる。このため、委託者は、受託者から、
・ 信託行為の必要的記載事項及び相対的記載事項(信託行為において定めを必要としている趣旨を含む。)(第4章第1節第1の4参照)その他信託行為の内容
・ 申請書及び申請書に添付する書類(事業計画書、収支予算書等)の内容
について説明を受け、その内容を理解した上で承諾したことについて、承諾書を作成することとし、当該書類を添付する。」
5 社会の変化への対応
委託者が意図した公益目的の実現手段は、時代の変化とともに変わり得るもの。受託者は、委託者の意図した目的を達成するために、社会環境の変化に応じて事務の実施方法を見直すことも「信託の本旨」に従った義務の一部とみなされます。
<参照> ガイドラインP11
「受託者が、信託の本旨に従って公益信託事務を処理する義務を果たすためには、信託行為の定めに従った処理を基本としつつも、当該公益信託を巡る社会環境等が変化した場合には、これに対応して公益信託事務の実施方法等を見直すことも求められ、」
(出所:内閣府公益法人行政担当室HP「新しい公益信託制度について令和8年1月14日時点版」、「公益信託認可等ガイドライン令和7年12月版」)
「変わっていくことができるものが、変えることができる。」
(白夜飛行)
春分の1日、笑顔の多い1日になりますようにお過ごしくださいね。
[編集後記]
消費税の記事はお休みしました。
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・「公益信託」
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