井上寧(やすし)税理士事務所井上寧(やすし)税理士事務所

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2017.09.02.Sat | 経理・会計

現金回収と支払の「時間差」で起きる「黒字倒産」介護事業では資金繰りが大切です。

土曜日は、〝介護事業者のための会計ハンドブック〟として、経営に必要な会計を分かりやすく紹介しています。今回は3回目、運転資金の必要性について紹介します。

「会計」と言っていますが、要するに「お金の管理」です。

領収書を整理したり、伝票をつくったりすることは、会社にとって必要なことですが、経営者にとって大切なことは、「お金の動きを通して会社の状態を把握し、経営をコントロールする。」(「起業の技術」浜口孝則:かんき出版)」ことです。

 

前週の具体例は次のとおりでした。

① 平成29年9月開業(事業期間は平成29年9月1日~平成30年8月31日)

② 収入は介護報酬月額100万円、支出は給料等の経費月額80万円

③ 収入時期は翌々月の25日、支出時期は当月末日

④ 利用者の1割負担は介護報酬に含めています。(分かりやすくするため)

月別資金繰り表は、次のとおりです。

9月から資金ショートします。10月には▲160万円の資金不足になります。何故ここういう状態になるのでしょうか?

 

介護報酬の入金サイトは、上図の月別資金繰り表でいうと(9月分の報酬は)

9月サービス提供 →10月国保連に10日までに請求 →11月25日入金でした

 

現金回収(キャッシュイン)と支払(キャッシュアウト)の時間がズレるからです。次のようなイメージです。

①介護サービス提供から現金回収(キャッシュイン)までに、最長86日間を要します。

サービス提供日が9月1日であれば、現金回収までに

9月(30日)+10月(31日)+11月(25日)=86日間

 

②しかし給与や家賃等の経費の支払いは、例えば支出時期を当月末日だとすると30日間です。

ようするに、①86日間-②30日間=56日間は資金不足に陥ることになります。(少し極端なイメージにしています。)運転資金を手当てしなければ、支払や返済がとどこおり、会計上は黒字であるのに、会社はつぶれてしまうという「黒字倒産」の事態になります。

 

資金繰り表とは別に、会計では損益計算書を作成します。これは収益や費用を集計して利益を計算するものです。現金(キャッシュ)の入金・出金に関係なく、会計上は利益の計算をします。通常は利益の金額と現金(キャッシュ)の増加額は一致しません。利益が出てもキャッシュがないと倒産してしまうということになります。 このような現金回収と現金支払の「時間差」で起きるのが、黒字倒産です。

損益計算書の利益が現金(キャッシュ)として手元にあるわけではありません。先の事例でいうと

8月決算の法人で平成30年8月分の介護報酬は、損益計算書(平成29年9月1日~平成30年8月31日)の8月分の売上高に計上されます。

しかし、実際の入金は10月25日になりますから、キャッシュインと売上高とはズレが生じます。

 

 

※8/19と8/27の記事中、「③収入時期は翌々月の10日」とあるのを、「③収入時期は翌々月の25日」に訂正しました。

 

火・木・土曜日は、「介護事業の基礎知識バージョンアップ編」として、記事を紹介しています。

 

「介護事業の基礎知識バージョンアップ編」は、ケアビジネスに関心がある方やこれから介護事業の経営に取り組まれようと考えられている方を対象に、介護事業に関する基本的で重要な事項を紹介する内容にしていきます。

 

このうち、土曜日は次のとおり〝介護事業者のための会計ハンドブック〟を連載しています。

「資金ショートを防ぐ介護事業の開業時運転資金の調達は計画的に。」はこちら(8/26)

「介護事業の開業時には、『運転資金』は4~5ヶ月分のお金が必要?の根拠」はこちら(8/19)

 

最近の【介護事業の基礎知識バージョンアップ編】の記事は次のとおりです。

「大阪府の住宅型有料老人ホームやサ高住における『サービス利用の見える化』」はこちら(8/31)

「『大阪府における介護施策の現状と課題、対応の方向性』では、データベースが整備されていない問題やケアマネジャーの資質向上が必要という指摘」はこちら(8/29)

「軽度者に対する生活援助サービスの給付のあり方」はこちら(8/27)

「大阪府内の有料老人ホーム等における介護サービス利用状況の実態調査」はこちら(8/24)

 

介護事業は社会課題解決事業です。

保険料と税で運営されている社会保険制度としての制度ビジネスです。3年ごとに改定される制度変更には、しっかりと対応することをおすすめします。

 

課題をお持ちの開業を準備されている方や準備を検討されている方は、是非、ご相談ください。一緒にベストな解決策を検討しましょう。

 

制度変更により、大きく収入が落ち込んで事業縮小や廃業を余儀なくされるケースを避けるために、制度改定を予測して、事業経営に活用することが大切だと思います。

 

介護事業にかかわる会計、税務、経営に関するご質問・ご相談については、窓口から電話やメールでお気軽にご相談ください。(無料です。)

 

月・水・金は次のとおり税務の記事を

月曜日は「マイホームの税金の手引き」

水曜日は「会社で事業をした場合(法人成り)のメリット」

金曜日は「いざそのときにあわてないための相続税や贈与税に関する知識」

 

会計、税務、経営に関するご質問・ご相談については、窓口から電話やメールでお気軽にご相談ください。

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