受託者の経理的基礎および技術的能力のうち「経理的基礎に係る受託者の固有財産について」 ~ 公益信託[38]

公益信託の記事を掲載します。
「公益信託に関する法律施行令(案)」等に対する意見(パブリックコメント)を受けて研究会(第4回)で議論されています。
論点のうち「受託者の資格」(公益信託法第8条第2号について)」の議論を紹介します
パブリックコメントの意見は次のとおりです
Q:
「添付しなければならない書類が細かすぎます。とくに受託者の経理的要素はここまで細かく必要でしょうか? そもそも法には『経理的基礎・技術的能力』という文言はありますが、財産的な裏付け(固有財産の多寡)を条件にはしていないので、千円単位で借金の有無まできくのは行き過ぎかと思います。これを聞いて、なにを確かめたいのか分かりません。」
事務局案は次のとおりです
A:
① 受託者が破産手続開始の決定を受けたことは受託者の任務終了事由となること、一般に、固有財産に関して破産状況にあるような個人・法人が他人の財産を管理するための公益信託事務を適正に処理できるとは考え難いことなどを踏まえ、公益信託事務の処理に支障がない程度の財政基盤が必要。
② そのため、受託者の固有財産の状況についても確認することが適切。
③ 受託者個人・法人ともに債務超過であっても、公益事務の内容・個々の受託者の状況を考慮して合理的な説明がされた場合には経理的基礎の基準を充足するものとして運用することを想定。
④ 上記の趣旨を踏まえると、個人が受託者となる場合の様式第2号について、千円単位の情報を求めるまでの必要性は乏しいことから、把握する単位については、百万円単位に修正する。
⑤ なお、作成に手間がかかるとの指摘について、個人・法人ともに、自らの財務状況を適切に把握していないような者について、信託財産の分別管理及び経理が適正に行われる仕組みが整備されているとは言えないと考えられる。
意見および事務局案を受けて委員からの意見は
A: 「固有財産について、信託財産だけでできる事業を、固有財産まで要求するのは公益信託法7条3項4号の『公益信託事務を処理するのに必要な経理的基礎を有することを明らかにする』ものとして求める書類と理解する。これに固有財産が入るというのは行き過ぎであると考える。欠格事項で滞納処分についての有無がわかるのでそれで充分である。」
B:「個人について固有財産を明らかにしなくてよいというのは、公益信託法の規定からも、公益法人制度の経理的基礎の概念からも説明がつかないのではと考える。認可基準を定めている公益信託法8条2号では『受託者が公益信託事務を適正に処理するのに必要な経理的基礎』を有していることが要件で、この点の説明が必要。経理的基礎とは公益法人の関係でも、受託者が十分な財政的な基礎を持っているかが含まれている。 経理的基礎は様々な業法上の規制の中で要求されると思うが、実際には法人が事業を行うため問題になってこなかった。公益信託において法人・個人を問わず受託者になれるときに、法人には求めるが個人に求めないということを合理的に説明できないと考える。個人について開示させる必要がないのであれば、法人に対しても求めなくてよいというのは、現在の公益信託法の建付けからは財産状況を求めない、債務超過だけでいいとならないと思う。」
C:「固有財産に関して、百万円単位への修正に賛成。個人たる受託者の財産・負債を明らかにすることとなっているが、ここまで必要かは疑問。公益信託以外の事業を行っていれば、その事業でどのような財産状況かといった把握は必要だが、全資産の内容を明らかにすることまでは不要であると考える。」
E: 「公益法人はその団体の財産が重要である一方、公益信託は、受託者の信託財産が前提となって事務を行うもの。全ての公益認定に対して要求してくるということは行き過ぎではないか。預り金がある場合やリスクのある要素があれば別だが、すべからく求めるのは費用対効果として見合わないのではないかと考える。」
F:「受託者の財産目録に関して、法人と個人で違いがあり得ると考える。法人は事業の目的が明らかだが、個人に関しては全部の財産をどこまで開示するかは検討が必要で、簡素化しても良いのではないか。」
このように委員からも様々な意見がでています。
(出所:「公益信託に関する法律施行令案等の概要 参考資料 内閣府公益法人行政担当室)
「変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する。」
(ピーター F.ドラッカー)
芒種の1日、朗らかにお過ごしくださいね。
クライアントに提案したいのは節税ではなく、より良い人生です。
[編集後記]
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