井上寧(やすし)税理士事務所井上寧(やすし)税理士事務所

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2025.10.01.Wed | 税金(法人)

合同会社の社員に対する事前確定届出給与を支給する場合の税務上の取り扱い ~ 法人節税策の基礎知識[114]




法人税の記事を掲載します。






合同会社は株式会社と違って役員任期や決算承認に関する株主総会ルールがありません。そのため「職務執行の開始日」が明らかではありません






を紹介します。






たとえば





Q:




1 合同会社であるA社(同族会社)は、社の業務を執行する社員(以下「業務執行社員」といいます。)に対して、毎月支給する役員給与とは別に所定の時期に役員給与(「役員賞与」といいます。)の支給を予定しています。


2 本件役員賞与の支給にあたり、A社は次の①から③までの手続を行う予定です。

① A社は、事業年度終了の日から3月以内に定時社員総会を開催することとしており、また、その定時社員総会に先立つ臨時社員総会において、業務執行社員ごとの任期を総社員の同意をもって決定し、定款に明記します。

 なお、業務執行社員の任期は10年とし、当該定時社員総会で決定された本件役員賞与に係る職務執行期間の開始の日は、定時社員総会の開催日とします。



② A社は定時社員総会において、業務執行社員に支給する役員給与および役員賞与の支給日および支給金額を総社員の同意をもって決定します。



③ ②で支給を決定した役員給与および本件役員賞与について、事前確定届出給与に関する届出書に記載し、その届出期限までに納税地の所轄税務署長に届け出るとともに、事前確定届出給与に関する届出書に記載した本件役員賞与をその記載した支給日に支給します。


3 これらの手続を行うこととした場合に、役員賞与の額は法人税法第34条第1項第2号に規定する定めに基づいて支給する給与(以下「事前確定届出給与」といいます。)に該当する給与の額として、その支給した日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができ、かつ、同号イに掲げる場合のその給与に関する届出書(以下「事前確定届出給与に関する届出書」といいます。)の届出期限は定時社員総会の開催日から1月を経過する日として問題ないでしょうか?

 



A:




1 事前確定届出給与は


  定期同額給与および業績連動給与のいずれにも該当しないもの(一定の要件を満たすものに限ります。)で、税務署長に事前確定届出給与に関する届出書を提出するルールとなっています。


2 事前確定届出給与に関する届出書の届出期限について


株主総会等の決議により、役員の職務につき所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定めをした場合におけるその決議をした日(同日がその職務の執行の開始の日後である場合には、その開始の日)から1月を経過する日とし、その1月を経過する日がその開始の日の属する会計期間開始の日から4月を経過する日後等である場合には、その4月を経過する日等とする旨規定されています。(つまり、どちらか早い日)


3 A社は、業務執行社員に対して支給する役員給与および本件役員賞与について、定時社員総会においてその支給日および支給金額をその総社員の同意をもって決定することとしており、この定時社員総会は法人税法施行令第69条第3項第1号に規定する「株主総会、社員総会その他これらに準ずるもの」に該当するものと考えられます。


4 また、その定時社員総会の決定は同条第4項第1号に規定する「株主総会等の決議」に該当するものと考えられ、かつ、その決定内容について記載した事前確定届出給与に関する届出書をその届出期限までに届け出るものとしていることから、役員賞与の額は事前確定届出給与に該当する給与としてその支給した日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができます


5 ところで、その事前確定届出給与に関する届出書の届出期限については、株主総会等の決議日が職務の執行の開始の日後である場合には、その開始の日から1月を経過する日とされており、合同会社の社員の場合にその職務の執行の開始の日をいつとするかが問題となります。


6 この点、法人税基本通達9-2-16によれば、同条第3項第1号及び第4項第1号の「職務の執行の開始の日」とは、その役員がいつから就任するかなど個々の事情によるとされており、また、会社法上、合同会社の社員については、株式会社の取締役に対して規定されている任期に関する定め(会社法332)や株主総会の決議による選任の手続についての定め(会社法329①)などが規定されておらず、定款に別段の定めがある場合を除き、社員となった者が合同会社の業務を執行することとされています(会社法590①)。


7 したがって、合同会社の社員については、会社法上、「職務の執行の開始の日」を強いて定める必要がなく、社員となったときからその業務を執行することとなり、その合同会社の社員となった日の属する事業年度の翌事業年度以後の「職務の執行の開始の日」が明らかではありません。


8 その点、株式会社においては、会社法に、役員の選任やその職務執行の対価の決定を株主総会の決議により行うこととする定め(会社法329①、332①、361①)や、取締役が計算書類を定時株主総会に提出し、その承認を受けなければならないこととする定め(会社法438)があることからすれば、一般的には、役員給与および役員賞与は定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価であり、その職務の執行の開始の日は定時株主総会の開催日となると解されます。


9 一方、会社法上、合同会社には、株式会社における株主総会の決議で役員の職務執行の対価を決定することとする定めや株主総会で計算書類の承認を受けなければならないこととする定めといった定めが設けられていないところ


A社は、その業務執行社員に支給する役員給与および役員賞与について、前事業年度以前の決算の状況を踏まえた当事業年度の業績見込みを考慮してその決定を行うため、前事業年度の決算が確定する定時社員総会において、その役員給与および本件役員賞与の支給日及び支給金額をその総社員の同意をもって決定することとしてます。


このような手続で決定したA社の役員給与および役員賞与は、その定時社員総会から次の定時社員総会までの職務執行の対価であると考えられ、加えて、A社では定時社員総会の開催日を業務執行社員の「職務の執行の開始の日」としていることからすると、役員賞与に係る「職務の執行の開始の日」はその定時社員総会の開催日となると考えられますので、届出期限はその定時社員総会の開催日から1月を経過する日となります。






つまり


① A社は、決算確定後の定時社員総会で賞与額と支給日を決定。


② この決議をもって「職務執行の開始日=定時社員総会日」と考えます。


③ よって届出期限は定時社員総会日から1か月以内であり、役員賞与は事前確定届出給与として損金算入できます。


合同会社であっても定時社員総会の決議を基準にすれば、事前確定届出給与として扱える、という結論です。









(出所:国税庁 文書回答事例)








「変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する。」

(ピーター F.ドラッカー)

秋分の1日、朗らかにお過ごしくださいね。









クライアントに提案したいのは節税ではなく、より良い人生です。




[編集後記]




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