介護報酬改定に係る「居宅介護支援」の主な論点をご紹介します。見直しの論点は次のとおりです。(上図は平成29年7月19日:第143回介護給付費分科会資料から)

 

「居宅介護支援」の見直しの主な論点

1 質の高いケアマネジメントの推進

2 公正中立なケアマネジメントの確保

3 訪問回数の多い利用者への対応

 医療と介護の連携強化

5 末期の悪性腫瘍の利用者に対するケアマネジメント

6 障害福祉制度の相談支援専門員との密接な連携

(平成29年12月18日「平成30年度介護報酬改定に関する審議報告」から)

 

今回は「医療と介護の連携強化とは何か」を紹介します。

 

次のとおり見直しを検討することとなっていました。

「介護保険制度の見直しに関する意見(平成28年12月9日 社会保障審議会介護保険部会)において、適切なケアマネジメントを推進するため、(省略)入退院時における医療・介護連携の強化等の観点から、居宅介護支援事業所の運営基準等の見直しを平成30年度介護報酬改定の際にあわせて検討する」

 

次の課題が指摘されていました。(平成29年7月19日:第143回介護給付費分科会資料)

 

(医療機関との連携が不十分)

今後、重度者や医療の必要性が高い利用者が増えていくと考えられることから、医療ニーズを踏まえた適切なアセスメントや、ケアマネジメントを行う際の医療との連携が重要です。

例えば、医療機関へ入院した人が退院後に円滑に在宅生活に移行するためには、入退院時にケアマネジャーが関与し、医療機関との連携を図ることが重要ですが、その取組が必ずしも十分ではないとの指摘があります。

 

具体的には次のとおり

(入院時の連携について)

① 介護報酬においては、利用者が病院等に入院するに当たって、ケアマネジャーが病院等の職員に対して、利用者の心身の状況や生活環境、サービスの利用状況を提供することを評価する「入院時情報連携加算」があり、利用者が入院してから遅くとも7日以内に情報提供した場合に算定が可能となっています。

② 実際には、入院後2日以内に入院先の医療機関に情報提供を行った割合は5割を超えています。

③ 診療報酬では、入院早期より退院困難な要因を有する患者を抽出し、退院支援を実施することを評価する「退院支援加算」があり、平成28年度診療報酬改定で新たに位置付けられた「退院支援加算1」では、病棟に職員を配置した上で入院後3日以内に患者の状況を把握し、退院困難な要因を有している患者を抽出することが算定要件となっています。

④ 利用者が入院する際に医療機関に提供している情報は、「認知症の有無や問題行動の有無(徘徊など)」が76.9%と最も高く、次いで、「疾患・病歴・病状」が74.7%、「家族構成・生活歴・職歴」が71.3%となっています。

⑤ 一方、入院時の情報提供において問題と感じる点については、医療機関から情報提供を求められないことや、医療機関の医師とコミュニケーションがうまくとれないこと、医療機関に報提供する機会・タイミングを確保することが難しいと感じているケアマネジャーが多い。

 

(退院時の連携について)

① 介護報酬においては、病院等を退院し自宅でサービスを利用するにあたって、病院等の職員と面談を行い利用者に関する必要な情報を得た上でケアプランを作成し、サービスの利用に関する調整することを評価する「退院・退所加算」があり、入院期間中3回まで算定することができます。

なお、3回算定できるのは、そのうち1回について、入院中の担当医等との会議(カンファレンス)に参加して、退院後の在宅での療養上必要な説明を行った上でケアプランを作成し、サービスの利用に関する調整を行った場合に限られています。

 

② 利用者が病院等から退院する際、医療機関の退院時カンファレンスには約半数のケアマネジャーが出席しており、出席した場合の延べ所要時間は60分~90分が23.8%と最も高い。この点について、居宅介護支援事業所側から医療機関に対してカンファレンスの開催を求めるなどの取組も行われていますが、医療機関の都合に合わせた訪問調整など、退院時に医療機関から利用者情報を得ることに困難を感じている居宅介護支援事業所が多い。

 

③ また、特に末期の悪性腫瘍(がん)の患者へのサービス提供に際して、患者の状態に応じた真に必要なサービスが迅速に提供されていない場合があるとの指摘があります。

実態として、利用者が死亡する前30日間において、疾患が「がん」と「がん以外」で比較した場合、サービス担当者会議の開催回数やケアプランの変更回数は、「がん」の場合の方が複数回数の対応を行っている割合が高い。

 

 

介護給付費分科会から、平成30年度介護報酬改定に関する基本的な考え方の中で、これらの課題を踏まえ、「医療と介護の連携強化」について、次のように報告されています。

 

(入院時における医療機関との連携促進)

入院時における医療機関との連携を促進する観点から、以下の見直しを行います。

 

① 居宅介護支援の提供の開始に当たり、利用者等に対して、入院時に担当ケアマネジャーの氏名等を入院先医療機関に提供するよう依頼することを義務づけます。

② 入院時情報連携加算について、入院後3日以内の情報提供を新たに評価するとともに、情報提供の方法による差は設けないこととします。

③ より効果的な連携となるよう、入院時に医療機関が求める利用者の情報を様式例として示すこととします。

 

(退院・退所後の在宅生活への移行に向けた医療機関等との連携促進)

退院・退所後の在宅生活への移行に向けた医療機関や介護保険施設等との連携を促進する観点から、退院・退所加算を以下のとおり見直します。

① 退院・退所時におけるケアプランの初回作成の手間を明確に評価します。

② 医療機関等との連携回数に応じた評価とします。

③ 加えて、医療機関等におけるカンファレンスに参加した場合を上乗せで評価します。

④ 退院・退所時にケアマネジャーが医療機関等から情報収集する際の聞き取り事項を整理した様式例について、退院・退所後に必要な事柄を充実させる等、必要な見直しを行うこととします。

 

(平時からの医療機関との連携促進)

① 利用者が医療系サービスの利用を希望している場合等は、利用者の同意を得て主治の医師等の意見を求めることとされていますが、この意見を求めた主治の医師等に対してケアプランを交付することを義務づけます。

② 訪問介護事業所等から伝達された利用者の口腔に関する問題や服薬状況、モニタリング等の際にケアマネジャー自身が把握した利用者の状態等について、ケアマネジャーから主治の医師等に必要な情報伝達を行うことを義務づけます。

 

(医療機関等との総合的な連携の促進)

医療・介護連携をさらに強化するため、特定事業所加算において、以下の全ての要件を満たす事業所を更に評価することとします。

① 退院・退所加算を一定回数以上算定している事業所

② 末期の悪性腫瘍の利用者に係る頻回な利用者の状態変化等の把握等に対する評価に係る加算を一定回数以上算定している事業所

③ 特定事業所加算(Ⅰ~Ⅲ)のいずれかを算定している事業所

※ 平成31 年度から施行します。

 

今回紹介した「医療と介護の連携強化」は、地域包括ケアシステムの推進を図るため、「医療・介護の役割分担と連携の一層の推進」の中で、重要となる体制整備のひとつです。

 

12/5から介護報酬改定の動向を紹介しています。改定に伴う介護サービスの論点を知っておくことは重要だと思います。

次回、1/9(火)は居宅介護支援の見直しの主な論点のうち、5の「末期の悪性腫瘍の利用者に対するケアマネジメント」を紹介します。

 

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火・木曜日は「介護事業の基礎知識~平成30年度介護報酬の改定」を紹介しています。

ブログ記事は

https://www.y-itax.com/category/kaigo/

 

平成30年度介護報酬改定の動向

居宅介護支援の論点

・論点①「質の高いケアマネジメントの推進とは何か?」はこちら(12/26)

・論点②「公正中立なケアマネジメントの確保とは何か?」はこちら(12/28)

・論点③「訪問回数の多い利用者への対応とは何か?」はこちら(1/2)

 

改定の方向性を踏まえて、TRAPE鎌田大敬氏が伝えたい「事業者が取り組むべき主な事項」

・「医療・介護報酬同時改定に関して現在までの整理」はこちら(12/14)

通所介護サービスの適正化の記事

・「通所介護に係る基本報酬の減算措置を含めた介護報酬の適正化」はこちら(12/12)

・「通所介護サービスの論点~生活機能向上連携加算の創設」はこちら(12/21)

 

訪問介護の生活援助の見直しの記事

・「身体介護を含めて訪問介護の報酬を見直し」はこちら(12/7)

・「訪問介護サービスの論点~生活援助の担い手の拡大(基準の緩和)」はこちら(12/19)

 

有料老人ホーム等の併設事業所に対する集合住宅減算の強化について

・「有料老人ホーム等の訪問介護サービスの見直し」はこちら(12/5)

 

改定スケジュールはざっくりと把握しましょう

・「平成30年度介護報酬改定まで、あと4か月およびそのスケジュール感」はこちら(8/17)

 

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・火曜日は「介護事業の基礎知識バージョンアップ゚編」

・水曜日は「同族会社とその役員の手引き」

・木曜日は「介護事業の基礎知識バージョンアップ゚編」

・金曜日は「相続税をわかりやすく!」

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・日曜日は「住宅取得等資金の贈与の非課税」の誤りやすい事例