井上寧(やすし)税理士事務所井上寧(やすし)税理士事務所

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2020.08.28.Fri | 税金(相続・贈与・譲渡)

遺言により配偶者に配偶者居住権を取得させる場合、遺言書には「相続させる」ではなく「遺贈する」と記載する ~ 贈与や相続・譲渡など資産税[18]

 

資産税の記事を紹介します。

 

今回は

 

遺言により配偶者に配偶者居住権を取得させる場合、遺言書には「相続させる」ではなく「遺贈する」と記載する

 

を紹介します。

 

配偶者居住権とは(ざっくりと)

 

配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として,終身または一定期間,配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利です。

遺産分割や被相続人の遺言により、配偶者に「配偶者居住権」を取得させることができます。

 

「相続させる」旨の遺言では配偶者居住権は取得できません

 

次のとおり条文上にも「遺贈」によるとされています。

 

民法 第1028条(配偶者居住権) 

被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得する。以下(略)。

 

一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。

二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき

 

「相続させる」という遺言であった場合に放棄の放棄を選択したときは

 

被相続人の死後、配偶者が配偶者居住権の取得を放棄したいと考えた場合、相続の放棄はすべての遺産の取得を放棄するものであり、一部の放棄はできないとされています。

つまり、配偶者が配偶者居住権の取得を放棄するためには、遺産全部の相続放棄をすることになり、配偶者の利益を害することになります。

 

したがって「遺贈する」という表現が正しいです。

 

 

しかし「相続させる」としたとしても、次のように遺言の効力は総合的に判断されます

 

遺言書中の特定の条項の解釈について (最高裁判例昭和58年3月18日)

 

「遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書の特定の条項を解釈するにあたつても、当該条項と遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して当該条項の趣旨を確定すべきである。」

 

つまり、「相続させる」とした遺言でも、被相続人は配偶者居住権を「遺贈する」という趣旨だったと判断する方が合理的な解釈が生じます。

 

 

変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する(ピーター F.ドラッカー)

Every day is a new day!

夏の1日を元気にお過ごしください。

 

 

贈与や相続・譲渡など資産税

[1] 父親が息子に時価より低額で、土地を譲渡した場合の所得税・相続税の考え方

[2] 長男がすべての財産を相続するかわりに、次男に従来から所有していた長男の土地を引き渡した場合に譲渡所得が発生します

[3] 離婚により自宅を妻に残産分与しました。夫は譲渡所得の申告が必要になります

[4] 離婚により住宅ローン付きの自宅を、妻に財産分与しました。妻は住宅ローン控除をうけられますか?

[5] 離婚により住宅ローン付きのマンションを、夫が妻に残産分与しました。夫の税金はどうなりますか?

[6] 離婚により住宅ローン付きのマンションを、夫が妻に残産分与しました。妻の税金はどうなりますか?

[7]  配偶者居住権は、配偶者の死亡により権利が消滅することを利用する節税術としてのメリットより、デメリットの方が大きい

[8]  それぞれ子どもがいる高齢者同士が再婚した場合の「配偶者居住権」の利用方法

[9] 配偶者居住権の対象となる建物が共有の場合

[10]配偶者居住権の対象となる建物を、その後に配偶者が取得した場合

[11]事業を廃止し、店舗兼住宅を居住用のみとして建物を使用する場合の配偶者居住権の取扱い

[12]相続時における配偶者居住権の評価の特徴となるポイント

[13]「配偶者居住権の価額」配偶者居住権の評価の考え方

[14]配偶者居住権の価額の算式の考え方について

[15]配偶者居住権の目的となっている敷地利用権の価額と土地所有権の価額の評価

[16]築年数の古い建物に配偶者居住権を設定する際に注意したいこと。建物の時価が配偶者居住権の価額になります

[17]相続人である配偶者が若い場合に、配偶者居住権を設定する際に注意したいこと

 

 

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