井上寧(やすし)税理士事務所井上寧(やすし)税理士事務所

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2020.08.25.Tue | 介護事業

「自立支援・重度化防止の推進」についてのこれまでの主な意見 ~ 2021年度介護報酬改定に向けて[7]

 

 

社会保障審議会・介護給付費分科会で、2021年度の介護報酬改定の議論が進んでいます。

 

今回は

 

「自立支援・重度化防止の推進」についてのこれまでの主な意見

 

をご紹介します。

 

介護報酬改定に向けた今後のスケジュールは次のとおりです。

 

 

 

①分科会で2020年夏まで総論的な議論を行います。

②分科会で2020年秋以降に具体的な議論を行います。

③年末の予算編成過程で改定率が決まります。

④改定率を踏まえて2021年1月頃に答申を行います。

 

 

 

第176回(20/03/16)以降の介護給付費分科会で出された意見を、事務局が取りまとめています。その資料が提出されています。

次の4つのテーマで取りまとめています。

この資料から分科会でのこれからの議論の方向性を考えることができます。

 

4つのテーマは次のとおりです。

①地域包括ケアシステムの推進

自立支援・重度化防止の推進

③介護人材の確保・介護現場の革新

④制度の安定性・持続可能性の確保

 

今回はこのうち②の「自立支援・重度化防止の推進」についてのおもな意見をご紹介します。

 

自立支援・重度化防止の考え方の趣旨は次のとおりです

 

■介護度の改善を評価する仕組みは、制度の持続可能性の観点からも重要です。

■自立支援や重度化防止の取組は何を目指すものかについて、共通認識を持って議論を進められるようにする必要があります。

■認知症対応についても、エビデンスに基づきプロセス評価を行い、PDCAサイクルに沿った対応を進めていくべきです。

 

 

ケアマネジメントについて

 

■自立支援・重度化防止の観点から、ケアマネジメントが重要となります。中立・公平性について検討が必要です。

 

プロセス評価・アウトカム評価について

 

■介護の質の評価するにあたり、全体をストラクチャー、プロセス評価からアウトカム評価にシフトするなど、利用者にとって介護保険法の目的に資する結果につながっているのかどうかという評価にシフトしていくことが重要です。

 

※ サービスの質を踏まえた介護報酬については、次のような3つの視点に分類でき、それぞれ特性に応じた介護報酬が導入されています。

介護サービスの質の評価の視点

①ストラクチャー(構造)

… 人的配置等(人の加配等)

②プロセス(過程)

… 事業者と利用者間の相互作用等(要介護度別の基本報酬、訓練等の実施)

③アウトカム(結果)

… サービスによりもたらされた利用者の状態変化等(在宅復帰等)

 

■アウトカム評価の検討の中で、クリームスキミングによる利用者のサービス利用への影響を検証した上で検討する必要があります。

 

※ クリームスキミング

アウトカム改善が見込まれる高齢者の選別などが生じる可能性があることをさします。

 

■現在の報酬体系では、要介護度が改善した場合、報酬が減ってしまうとともに、アウトカムを評価する加算も単位数が少なく、必ずしも事業所のインセンティブにつながっているとは言えない状況です。自立支援・重度化防止の観点から、要介護度の改善につながる質の高いサービスの取組を評価し、事業所においてインセンティブが働くような介護保険制度の持続可能性を高める仕組みの構築が必要です。これは、職員のモチベーション向上等にもつながるのではないでしょうか?また、実施に当たっては財政中立で行うべきではないでしょうか。

 

■介護報酬上、要介護度が上がると区分支給限度額が上がりサービスを多く使えるため、要介護度が上がることを望む方が見受けられます。今後、自立支援を進める観点から、要介護度が改善することに対するインセンティブを考える必要があります。

 

■リハビリテーションの目的は、食事や入浴、排せつ等を可能な限り自らできるようにすることです。意思決定支援が更に重要になることも踏まえ介護サービスの質、アウトカムを検討していく必要があります。

 

■リハビリテーションの領域以外のサービスについてもアウトカム評価、プロセス評価を導入していき、サービスの質が可視化できるような指標の開発、それに伴う報酬体系というものが必要であり検討すべきです。指標には、疾患の重症化防止や症状の緩和等の視点も重要です。

 

■看護小規模多機能型居宅介護について、利用者の褥瘡の改善、排せつの自立、経口摂取の回復等に改善の効果がみられることから、介護施設のプロセス評価の仕組みを参考に評価を検討すべきです。

 

 

■利用者が機能訓練やリハビリを望まない場合に、事業所が機能訓練やリハビリ以外のやり方でQOLの向上へのアプローチを行った場合にもそれが評価されるような多様性が担保された仕組みが必要です。

 

評価指標、データ活用について

 

■サービスの質の評価指標に関する標準化について、共通の物差しが必要です。

 

■サービスの質の可視化やその評価を積極的に進めていくべきです。CHASEやBarthel Indexには、情報の確度を高め、多数の情報を収集する必要があるため、詳細な要件は求めず提供を評価すること等を検討するべきです。

CHASE … 介護分野のエビデンスを集めたデータベース

Barthel Index … ADLの評価方法

 

■CHASEで収集するデータについて、栄養と関連し、口腔の清潔や口腔機能の評価も重要であり、今後追加を検討して欲しい。

 

■評価指標の在り方に関し、未病指標を活用し改善した事業所は報われるというシステムを検討すべきです。健康か病気かという二分論ではなく、グラデーションモデルへと変えるべきです

 

■「社会参加」をもう少し具体的にすべきです。外出や買い物等どのような内容が社会参加となるのかを、もっと細かく分析していく必要があります。

 

専門職間の連携などについて

 

■利用者のADLの維持や生活機能向上に関しては、事業所・施設とリハビリテーション専門職、介護支援専門員の連携、特に事前関与が効果的であることから、事前に関与できる方策の推進が重要です。

 

■高齢者はポリファーマシーが発生しやすいとの指摘もあり、ケアマネジャーと薬剤師の情報連携の仕組みを検討すべきです。

 

■通所介護や通所リハビリテーションなどにおいて、口腔状態のスクリーニングと情報共有の仕組みづくりを進めていくべきです。

 

 

 

リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養について

 

■リハビリテーションは、継続してどう提供していくかという考えも重要です。機能に偏らず、活動と参加もバランス良く行うことを進めてきましたが、今後、これをいかに高めていくかという視点から、活動と参加のリハの切り分けや、評価を高める等の対応を検討すべきです。

 

■医療保険のリハビリテーションの一つとして、歯科関連職種が取り組む摂食嚥下機能訓練が認められており、介護保険においても歯科関連職種をリハビリテーション職種の一つとして位置づけることを検討して欲しい。

 

■低栄養の予防が自立支援につながるとのエビデンスもあり、在宅においても取組も進めていくべきです。

 

■リハビリテーション、口腔、栄養の連携による効果的な取組について、口腔や栄養、運動の評価を多職種で協働し、様々な場面での取組を総合的に勘案してそれぞれの対応を考える仕組みづくりが重要です。

 

■リハビリテーション、口腔、栄養のトライアングルの図が示されていますが、いずれの分野においても薬との関係は切り離せるものではなく、薬剤師との連携の重要性についても共通の認識を持つべきです。

 

個々の加算等について

 

■ADL維持等加算について、Barthel Indexを評価指標として使っていくことは、介護現場における使用率等からも適当なのかどうか。当該指標には認知症の評価が入っていないため、この点についても検討が必要です。

 

■ADL維持等加算について、ケアマネジャーとの連携を図ることも非常に重要です。算定のハードルが高いことから、算定要件・取得要件の緩和を検討すべきではないでしょうか。

 

■Barthel Indexを測る際、慣れた職員が行うことが重要であり、医療系施設から福祉系施設に職員を派遣し、対応するということも考えられます。

 

■生活機能向上連携加算の算定割合が低いことから、広く地域のリハ職を活用する方向での誘導策を検討してはどうですか。算定率の向上につなげていくため、例えば連携等に関してのガイドラインを示すことなども検討してはどうですか。当該加算や生活行為向上リハビリテーション実施加算は、制度的・構造的に問題があり、算定率が低いと考えます。また、ICTの活用等も検討すべきです。

 

■認知症ケアについて、BPSDに対応も非薬物療法を原則としており、本人の不安などを取り除くための、様々な角度からのアプローチによる、本人が安定した時間を保つケアの提供が重要です。

BPSD … 暴言や暴力など周囲の人との関わりのなかで起きてくる症状

 

■口腔衛生管理体制加算に関し、口腔ケアの研修会の開催、摂食嚥下への支援等が求められているため、こうした連携について、更に高く評価する方向での検討や、歯科医院への通院や訪問歯科の評価も検討するべきです。

 

■経口維持加算等の経口摂取の支援について、前向きな見直しや在り方の検討をすべきです。

 

 

(出所:社会保障審議会介護給付費分科会資料 20/07/08)

 

 

変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する(ピーター F.ドラッカー)

Every day is a new day!

夏の1日を元気でお過ごしください。

 

 

2021年度介護報酬改定に向けて

[1] 改定のスケジュールと改定の論点となる「地域包括ケアシステムの推進」

[2] 改定の論点「自立支援・重度化防止の推進

[3] 介護報酬改定の論点「介護人材の確保」

[4]  「介護現場の革新」とはなにか

[5]   2021年度介護報酬改定の論点「制度の安定性・持続可能性の確保

[6] 「地域包括ケアシステムの推進」についてのこれまでの主な意見

 

2040年問題

① 介護保険制度地域支援事業の「生活支援サービス」へのニーズの増加

 介護サービスの利用者数は2040年度までに約1.5倍に増える見込です

③ 「ポスト2025年」2040年に向けて介護事業を考えるときの視点

④ 2040年に向けて介護事業を考えるときの視点「健康寿命の延伸」とは

 介護事業を考えるときの視点「医療・福祉サービスの改革」とは

⑥ 介護事業を考えるときの視点「健康寿命の延伸プラン」の内容とは

⑦ 生産性の向上を図るための「医療・福祉サービスの改革」の内容とは

 「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」マンパワーシミュレーション

 介護ロボット開発等加速化事業と税制優遇措置(税額控除と固定資産税の特例

⑩ 介護ロボットの導入による業務負担軽減と経営力向上計画の作成

⑪ 管理者要件」主任ケアマネジャー以外も継続可能です。経過措置を6年間延長

 2021年度介護報酬改定に向けた検討事項について

 2021年度「介護保険制度改正の全体像」(介護保険制度の見直し関する意見

 「一般介護予防事業の推進」~介護保険制度の見直し関する意見

⑮ 総合事業の効果的な推進 ~ 介護保険制度の見直し関する意見(介護保険部会

 求められるケアマネジメントとは何か

 保険者(市町村)機能の強化を図るためのPDCAプロセスの推進

 保険者(市町村)機能の強化【調整交付金】【データ利活用の推進】

 地域の実情に応じた地域包括ケアシステムの取り組みが必要

 地域包括ケアシステムの推進【医療・介護の連携

㉑ これからの介護保険事業計画における「認知症施策の総合的な推進

 「介護人材の確保と介護現場の革新」~介護保険制度の見直し関する意見

 被保険者範囲と受給者範囲の見直しの視点【介護保険制度の見直し関する意見】

㉔ 今後の補足給付の在り方についての検討【介護保険制度の見直し関する意見】

㉕ 施設サービスにおける多床室の室料負担について

 ケアマネジメント(居宅介護支援)の10割給付(自己負担はゼロ)の見直し

 軽度者(要介護1・2)への生活援助サービスに関する給付の在り方について

 費用負担が重いときの高額介護サービス費(利用者負担が一定額を超えると払い戻しされます)について

 利用者負担割合を「3割」または「2割」とする所得等基準について

 現金給付を介護保険給付として制度化するか否か

 要介護認定制度の簡素化について

㉜ 住所地特例の対象施設と同一市町村にある認知症高齢者グループホームを住所地特例の対象とすることについて

 

 

高齢化に伴う日本の社会的課題に対して、会計・税務専門職としての役割を果たしたいと考えております。

 

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ブログ記事は

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・火曜日は「介護事業」

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