井上寧(やすし)税理士事務所井上寧(やすし)税理士事務所

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2019.06.07.Fri | 税金(相続・贈与・譲渡)

相続時精算課税の選択をした場合の贈与税の計算 ~ これならわかる相続税㉝

 

金曜日は「相続税をわかりやすく!」です。

 

相続時精算課税の制度とは

60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。

 

制度の概要は

 相続時精算課税は相続税のかからない方に有利な贈与税の制度です 1

 

相続時精算課税の選択をした場合の贈与税計算の考え方

を紹介します。

 

暦年課税と区分して計算します

 

相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択をした年以後、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。

 

特別控除額2,500万円があります

 

その贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円。ただし、前年以前において、すでにこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出します。

 

選択後、続時精算課税に係る贈与者以外の者から贈与を受けた場合は

 

相続時精算課税を選択した受贈者が、相続時精算課税に係る贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除し、贈与税の税率を適用し贈与税額を計算します。

 

たとえば、

父親および母親から生前贈与を受けます。このうち父親からの贈与は、相続時精算課税を選択する場合

 

【1年目 】

父親から1,000万円、母親から400万円の贈与を受けます。

父親からの贈与については、相続時精算課税を選択します。

 

①父親からの贈与の考え方

課税される金額の計算は次のとおりです。特別控除額2,500万円のうち1,000万円を控除します。

1,000万円 - 1,000万円(特別控除額) = 0(課税価格)→ 贈与税はかかりません

翌年以降に繰り越される特別控除額の計算をします。1,500万円です。

2,500万円 - 1,000万円 = 1,500万円(翌年繰越の特別控除額)

 

②母親からの贈与の考え方

母親からの贈与については、相続時精算課税を選択していません。

暦年課税を選択します。

 

ⅰ 2,500万円の特別控除額ではなく、110万円の基礎控除額を受贈額より控除します。

400万円 - 110万円(基礎控除額) = 290万円

 

ⅱ 贈与税額の計算

290万円 × 15% - 10万円 = 33.5万円 (贈与税)

 

【2年目】父親から1,000万円の贈与を受けるとします

 

ⅰ 課税される金額の計算は次のとおりです

1,000万円 - 1,000万円(特別控除額) = 0(課税価格)→ 贈与税はかかりません

 

ⅱ 翌年以降に繰り越される特別控除額の計算をします。500万円です。

1,500万円 - 1,000万円 = 500万円(翌年繰越の特別控除額)

 

【3年目】父親から1,000万円の贈与を受けるとします

 

ⅰ 課税される金額の計算は次のとおりです

1,000万円 - 500万円(特別控除額) = 500万円(課税価格)

 

ⅱ 贈与税額の計算は次のとおりです

500万円 × 20% = 100万円(贈与税額)

 

相続時精算課税のポイントは次の3つです

 

①相続時精算課税を選択した場合、その後の撤回はできません。

②贈与税の期限内申告が必要です。

③相続時精算課税を選択した場合、その選択に係る贈与者(この例では父親)が死亡したときの相続税の課税価格に、その贈与者から贈与により取得した財産の贈与時の価額を加算します。

 

この例では、父親から贈与を受けた財産の合計額3,000万円を、父親が死亡したときの相続税の課税価格に加算することとなります。

計算の考え方を図解すると次の図のようになります(上の事例とは金額は違います)

 

(出所:国税庁パンフレット)

 

 

 

 

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「相続税をわかりやすく!」の記事は

http://www.y-itax.com/category/souzoku/

 

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